講師
長谷川 祐基
卒業大学:筑波大学
形成外科分野の持つ多様性と奥深さに圧倒
私がライフワークとして取り組んでいる頭蓋顎顔面外科領域は、頭蓋や顔面変形を生じる疾患を土台である骨から治すという分野です。対象となる疾患としては口唇口蓋裂を含めた先天異常、顔面骨骨折、顎変形症に加え、眼や鼻の美容手術、顔面神経麻痺や眼瞼下垂、頭頚部再建など軟部組織に対する治療など、多岐にわたります(日本部外顎顔面外科学会ホームページより引用)。一人前のクラニオフェイシャルサージャン、“お顔”を治すスペシャリストを目指し、日々臨床に取り組んでおります。
私が形成外科を志したのは市中病院での初期研修がきっかけでした。当時は外傷、皮膚腫瘍、難治性潰瘍などのいわゆる形成外科的common diseasesだけを扱う科だと思い込んでおり、またこうした治療をできるようになることが最大の目標でした。しかし、その後東京女子医科大学に入局し大学病院で多種多様な手術に参加するようになり、形成外科分野の持つ多様性と奥深さに圧倒されたのを覚えております。特に主任教授である櫻井裕之先生に直接のご指導をいただき、形成外科医の根幹をなす技術や考え方を醸成させていきました。
スペシャリティを追求していく
入局から数年後の専門医を取得したころ、自身のサブスペシャリティを考えるなかで、やりがいと面白さを感じていた口唇口蓋裂治療を本格的に学びたいと思うようになりました。そこで櫻井教授にお願いし、2016年度に東京都立小児総合医療センター 玉田一敬先生の元で1年間の研修をさせていただきました。同院は都内で最も多くの口唇口蓋裂手術を行っている施設であり、玉田先生に直接指導を受けながら、執刀経験までさせていただけるという大変に恵まれた環境でした。また他の小児形成外科手術も豊富であり、とくに頭蓋縫合早期癒合症の頭蓋・中顔面形成術に参加させていただいた経験をもとに、研修後は東京女子医科大学で同様の手術を行わせていただけるようになりました。玉田先生は私が初めてお会いした日本を代表するクラニオフェイシャルサージャンでした。ここでの研修で頭蓋顎顔面外科という分野の面白さを知り、玉田先生に対する尊敬とあこがれの気持ちから、私自身もクラニオフェイシャルサージャンを目指すようになりました。
成長期を経た口唇口蓋裂の患者様の中には、かみ合わせの悪さを伴う上下顎の変形や鼻の変形など、整容的な問題を持つ方々がいます。こうした患者様に対する手術を、自信をもって行えるようになりたいと考え、2021年度は東京警察病院 渡辺頼勝先生の元で、2022年度からはクリニカ市ヶ谷 倉片優先生の元で、週1回手術を見学させてもらえるようになりました。緻密な術前計画と確かな技術に基づいた渡辺先生と、国内における輪郭手術の第一人者である倉片先生の手術は一朝一夕でまねできるものではありませんが、東京女子医科大学で私が行う手術にフィードバックさせることで、その精度が高まっていることを日々感じております。
自身のキャリアを決める土壌がここに
あらためて自身のことを振り返りますと、東京女子医科大学形成外科の持つ懐の深さが私のキャリア選択を支えてくださっていることに気づかされます。これから入局を考えている先生方の中には、形成外科分野への大まかな関心はあっても、その中の専門性までは想像できていない方も多くいらっしゃると思います。まずは形成外科分野をくまなく学び、その過程でサブスペシャリティを探していく、こうしたキャリア形成を当医局は支えてまいります。
※掲載スタッフの役職・仕事内容などは、2023年時の情報です。