研究内容
はじめに
形成外科学は身体表面の形態・機能を修復する外科の一分野であり、当科で行っている研究テーマも体表面に関わる様々な病態に対する診断・治療を中心として取り組んでいます。
基礎研究では「顔面神経麻痺」に対して生理学(神経生理学分野)教室との共同研究を行い、脂肪幹細胞を用いた新たな治療法の開発を行っています。また「外傷性皮膚全層欠損」に対しても、再生医療との融合による新たな創傷治療法の確立を目指しています。臨床研究においては、「自家組織移植を用いた乳房再建術」を中心に進めております。術式の革新としては遊離皮弁移植の新たな術後モニタリング法の開発研究を行い、術後吻合部血栓の早期発見による安全な再建技術の確立を目指しています。また整容面に関しては、3D画像データを用いた乳房再建の術前シミュレーションと、再建乳房の術後経時的変化の解析を行い、より美しいバストの再現に尽力しております。
顔面神経麻痺に対する新たな治療法の確立
当教室では、12年前より動物実験モデルを用いた顔面神経再生の基礎研究を行っています。現在は既存の生体内分解性人工神経誘導管と細胞ソース、ドラッグデリバリーシステムを組み合せたハイブリッド型人工神経誘導管の作成と臨床応用を目標に研究を続けています。
ラット顔面神経頬筋枝7mm欠損モデルを用いた顔面神経再生研究
Mari Shimizu, Hajime Matsumine, Hironobu Osaki, Yoshihumi Ueta, Satoshi Tsunoda, Wataru Kamei, Kazuki Hashimoto, Yosuke Niimi, Yorikatsu Watanabe, Mariko Miyata, Hiroyuki Sakurai. Adipose-derived stem cells and the stromal vascular fraction in polyglycolic-acid (PGA)-collagen nerve conduits promote rat facial nerve regeneration. Wound Repair Regen 2018. ;26(6):446-455.
皮膚全層欠損に対する新たな治療法の確立
温度応答性培養皿を用いた高機能ヒト培養表皮シートの臨床使用に向けた前臨床研究を行っています。
今後、より治療成績の良い培養表皮移植による熱傷、創傷治癒を目指しています。
温度応答性培養皿を用いたヒト培養表皮シートに関する前臨床研究
また人工真皮内への脂肪由来幹細胞、bFGF等の導入に関する基礎研究を行い、皮膚全層欠損に対する病悩期間の短縮を可能する新たな治療法の確立を目指しています。
Hajime Matsumine, Giorgio Giatsidis, Atsuyoshi Osada, Wataru Kamei, Hiroshi Fujimaki, Yasuhiro Tsukamoto, Kazuki Hashimoto, Kaori Fujii, Hiroyuki Sakurai. Keratinocyte sheets prepared with temperature-responsive dishes show enhanced survival after in vivo grafting on acellular dermal matrices in a rat model of staged bi-layered skin reconstruction. Regenerative Therapy 2019; 11:167-175.
Yuki Hasegawa, Hajime Matsumine, Atsuyoshi Osada, Nami Hayakawa, Wataru Kamei, Niimi Yosuke, Hiroyuki Sakurai. Fibroblast growth factor-impregnated collagen-gelatin sponge improves keratinocyte sheet survival. Tissue engineering. Part A. 2022; 28(7-8):373-382.
3Dカメラによる乳房再建術後の経時的変化の検討
乳房再建症例の術前、術後の3Dデータ構築を行い、様々な計測データを経時的に解析することにより、より美しい乳房再建術式を確立することを目指しております。
3Dカメラを用いた再建乳房の画像解析
遊離組織移植術の新たな術後モニタリング法の開発研究
当科では移植組織内静脈圧モニタリング法を用いて移植組織内静脈圧波形を視覚化、定量化することにより、術後吻合部血栓形成の早期発見に関する研究を行っています。
遊離組織移植後の静脈圧モニタリング法
Hajime Matsumine, Mariko Mogami, Osamu Fujiwara, Masahiro Hasegawa, Hiroshi Ito, Hiroyuki Sakurai. Improvement of the salvage-rate of flap after venous thrombosis with Intraparenchymatous venous pressure monitoring. Microsurgery 2018; 38(5):498-503.